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『ピーター・パン』(J.M. バリ)

幼児向けの簡略版を除き、全訳版を初めてきちんと読みました。
原題は、『Peter and Wendy』(1911年発表)。


そもそも原作者によるピーター・パン作品も色々あるそうです。
1902年の小説・1904年の戯曲・1906年の小説と、表題も異なるこれらの作品にはそれぞれに重要な意味があって甲乙つけがたいようですが、現在の日本でピーター・パンと言えば、最後の1911年版をさすことが多いようです。

全訳版とは言え、筋立ては絵本などで知る通りです。
子供部屋にやってきた少年ピーター・パンと妖精ティンカー・ベルに連れられて、ウェンディたちは「ネバーランド」に向かい、海賊フック船長と戦います。フックは「時計ワニ」に食べられ、ウェンディたちは両親のもとに戻り、ピーター・パンは独りになる・・・。
タイガー・リリー救出にまつわる冒険を私は知りませんでしたが、フック船長との戦いの一例、といった程度の挿話です。

全訳版で充実しているのは、ウェンディたちの両親の描写や、登場人物たちの心の描写に、作者自身(あるいは大人になったウェンディ)が主に大人の読者に向けた解説をしているような場面です。

特に、ティンカー・ベルの嫉妬やフック船長の孤独感は、物語にも重要な意味を持っています。
実は、子供の頃に読んだ簡略版のピーター・パンでは面白さが全く分からなかったのですが、おそらく、脇役たちの心が全く描かれていなかったからだろう、と思います。



さて、ディズニー版の実写映画(2003年)もCS放送で観ました。
あちこちを改変してはいましたが、原作をとても大切にしながら作ったのだろうな、と思える作品。
もっとも重要な変更はウェンディの役柄でしょう。
原作よりも大人の女性に近い雰囲気になり、表の筋立てよりも、隠れた心の物語にこそ大きな変化が生まれています。
そして、この方が原作の本質がよりよく表現されているように思います。
ティンカー・ベルやフック船長の“物語”も、さらに生き生きしたのではないでしょうか。
映画の決定版かもしれません。

なお、大人になったピーター・パンを描いた『フック』(1991年)も観ましたが、何かが気に入りません。
やはり原作を大切にしながら作ったようですし、うまく構成されているのも確かなのですが・・・。
理由が分かったら改めて記事にします。
楽しめる作品としては、おすすめします。


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  • 作者: J.M. バリ
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2000/11/17
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2011-09-23 16:26  nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0)  共通テーマ: [最近読んだ本]

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